資材価格

コンクリート型枠用合板の価格が変動する理由

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コンクリート工事で使われる型枠用合板の価格が変動する理由を知りたい…。

型枠用合板の価格が変動する主な理由

  • 輸入が約9割を占めるため、為替(円高・円安)の影響が大きい
  • 主な輸入国"マレーシア"の市場動向
  • 日本国内の型枠用合板の生産量
  • 日本国内の型枠需要

コンクリート型枠は輸入が約9割

日本国内で流通するコンクリート型枠用合板は輸入品が9割を占めるとされています。

マレーシアからの輸入が大半を占める

コンクリート型枠の輸入国

上図は財務省貿易統計を基に作成した「コンクリート型枠」の輸入国割合を示しています。

近年は輸入量の8割以上をマレーシアが占めていることが分かります。

国内で流通するコンクリート型枠用合板のうち、約9割を輸入品が占めるなか、そのうち8割以上がマレーシアということは、マレーシア市場の影響が極めて大きいことが分かりますね。

日本国内の生産量

コンクリート型枠用合板の国内生産量

2020年に発生した新型コロナウイルス感染流行のあと、ウッドショックやロシアのウクライナ侵攻、円安の進行など様々な影響が重なり、輸入品の価格上昇や品不足が起こりました。

このような状況下で国産型枠用合板の需要は増しているものの、すぐに国産に転換するのは難しいと考えられます。

なぜなら国産材(スギやヒノキ)を使用した型枠用合板は、輸入材の合板に比べて曲がりやすく、転用して使える回数が少ないため、長く普及してこなかった事情があるからです。

しかしマレーシアやインドネシアなど南洋材の主産地では、違法伐採による環境破壊や先住民の土地を奪っていることが課題にあり、環境や人権に配慮した国産材に切り替える機運も強まっています。

具体的に、2020年には三菱地所グループが、2030年度までに工事に使う型枠用合板を国産合板や人権や環境に配慮した合板に切り替える方針を発表したり、政府により環境保護に配慮しながら国産材を促進する動きもみられます。

今後はすべてを国産材に切り替えることは難しいものの、徐々に国産材が増えていく流れになるでしょう。

コンクリート型枠用合板の需要

型枠用合板の価格を把握するためには、国内でどのくらい型枠の需要があるか把握するのも重要です。

型枠需要が増加すれば価格は上昇傾向になり、逆に需要が減少すれば価格は減少傾向になります。

RC造の着工床面積推移

上図は日本国内の鉄筋コンクリート造(RC造)建物の着工床面積の推移を示しています。

近年は建築需要の低下、特に鉄筋工の不足などを背景に鉄筋コンクリート造(RC造)から鉄骨造(S造)へのシフトが進んでいる傾向にあります。

RC造建物の需要が減少することは、型枠需要の低下に直結しますね。

上記は建築物に限りますが、土木構造物にもコンクリート型枠は使われます。

ただ日本国内のインフラ需要は今後も大きく伸びていくとは言い難く、建築・土木を合わせた型枠需要は大きく増加することはないと言えるでしょう。

また近年は、工場でコンクリートを造って現場に運んで組み立てる「プレキャスト工法」の利用もあり、プレキャスト工法が増加すると現場でのコンクリート打設が少なくなり、型枠用合板の需要は減少する方向になります。

上記のようにコンクリート型枠用合板の需要は、国内でコンクリート打設が行われる建築物や土木構造物の需要により変動します。

コンクリート型枠用合板の価格動向

コンクリート型枠用合板の価格動向

コンクリート型枠用合板の資材価格を上図に示します。(建設物価:塗装品(輸入品)12×900×1,800、東京)

2016年12月~2019年7月の上昇相場

コンクリート型枠用合板の価格動向

2016年12月から2019年7月頃まで、コンクリート型枠用合板の価格は緩やかに上昇していました。

コンクリート型枠の最大輸入国であるマレーシアにおける長雨の影響、環境規制などに伴う原木不足によって供給が減少したことが要因とされています。

原料の南洋材丸太は主産地のインドネシアやマレーシアで伐採規制が年々強まり、減産や工場閉鎖で供給が減少することによって価格が上昇していました。

2021年2月~2022年9月の上昇相場

コンクリート型枠用合板の価格動向

2021年2月から2022年9月頃に高止まりするまでに、コンクリート型枠用合板の価格は19か月で+75%も上昇しました。

型枠合板の価格上昇は、新型コロナウイルス感染流行をきっかけに、下記のように様々な要因が重なって生じたものと考えられます。

  • 新型コロナウイルス感染流行前から、国内の鉄筋コンクリート(RC)造の需要は低迷しており、主産地マレーシアなどのメーカーにとって厳しい経営状況が続いていた。
  • 新型コロナウイルス感染流行の影響で2020年は建築需要が減少し、主産地のマレーシアなどのメーカーはさらに採算が悪化、一部工場が稼働停止するなど生産量が減少する動きがあった。
  • マレーシアでは2021年6月1日からロックダウン(都市封鎖)が行われ、工場の稼働率が落ちることで供給力が減少した。
  • コンテナ不足による海上輸送費の上昇。
  • 天候不良やコロナ禍による労働者不足で合板原料の"丸太"の価格が上昇。
  • マレーシアで新型コロナ感染の再拡大など、コロナ禍の影響が続き工場など人手不足が続く。
  • コンクリート型枠用合板は約9割を輸入が占めるため、円安の影響が大きい。
  • アメリカの住宅需要増加をきっかけに起こったウッドショックの影響で、主産地の東南アジアで型枠用木材の不足が続いている。

上記のように輸入品の価格が上昇しているなか、国産品で代替しようにも、これまで輸入品に頼ってきた状況を急に切り替えるのは容易ではなく、さらに型枠以外に使われる合板もウッドショックやロシアウクライナ戦争で品不足になっていることが、価格の上昇を促進したわけですね。

まとめ

コンクリート型枠用合板の価格を決定するのは、基本的には国内の現場コンクリート打設の需要がどれだけあるのかによって決まりますが、約9割を輸入品に頼っているため、輸入元の生産地の事情で合板の供給が制限されると、国内の需要に関係なく価格が変動してしまいます。

今後、生産地の市況だけで価格が大きく変動しないように、国産の割合を増やしていくことが重要になると考えられますが、材料の特性上、輸入品に頼らざるを得ない状況が続きそうです。


【参考資料】

  • 日本経済新聞

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