資材価格

コンクリートの価格が上昇する理由

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コンクリートの価格が上がってるみたいだけど何でだろう?

生コンクリート価格が上昇する主な理由

  • 原材料(セメント・骨材)の価格上昇
  • 輸送コスト(燃料費・人件費)の上昇
  • 生産工場が限られており、共販体制により価格競争が働きにくい
  • 需要と供給のバランス

原材料価格の上昇

生コンクリートの原材料

生コンクリートの材料費が上昇する直接的な要因は、生コンクリート製造に使われる原材料価格の上昇です。

原材料の中でも「セメント」と「骨材(砂・砂利)」の価格変動が大きな影響になります。

セメント

セメント価格の推移

セメントは2018年頃より横ばいから緩やかな上昇傾向が続いていましたが、2022年はロシアのウクライナ侵攻の影響で燃料の石炭価格が高騰し、セメント価格も大きく引き上げられました。

2022年以前、生コンの価格はセメントの価格変動にはあまり影響を受けていませんでした。

ところが2022年のセメント価格の高騰は、生コン価格の引き上げにつながるほど大きな影響となっています。

セメント価格上昇の理由について詳しくは下記の記事で解説しています。

骨材

骨材価格の推移

骨材(砂・砂利)は生コンの原材料の大部分を占め、価格に大きな影響をあたえています。

2019年頃より全国的に骨材の価格が上昇傾向にあり、運転手不足による輸送コストの上昇が背景にあると考えられます。(札幌の骨材価格は2013年頃より顕著に上昇。)

骨材価格上昇の理由について詳しくは下記の記事で解説しています。

輸送コストの上昇

生コンや原材料を運ぶためのコストも価格上昇につながる要因です。

燃料費

燃料費は原油価格に連動しており、原油価格は需要と供給による影響のほか、例えば下記のように様々な要因に左右されます。

  • 産油国の政策
  • 地政学的リスク
  • 投機
  • 先物市場動向

人件費

少子高齢化による労働力確保の難しさや、賃金の安さ、労働環境の劣悪さを背景に、近年はドライバー不足が続いています。

ドライバーがほしい需要に対して、供給が少なくなっているため、賃金を上げてでも人手を確保しようとしますよね。

国土交通省は2017年11月4日に「標準貨物自動車運送約款等の改正」を行うことで、それまでどんぶり勘定だった運送費を適正に受け取れるように改善しています。

価格競争が働きにくい

生コンクリートは鉄や木材のように他資材と比べて、そもそも価格競争が働きにくい資材なのです。

価格競争が働きにくい理由

  • 生コンは遠方から運ぶことのできない資材。
  • 全国にある協同組合の組織力が大きい。

生コンを供給できる工場が限定

まず、生コンは工場での練り混ぜ開始から工事現場に到着するまでの時間を1.5時間以内に定められおり、供給できる工場が限られているのが理由です。(JIS規格)

工事現場まで生コンを1.5時間以内に運べる距離にある工場しか利用できないため、地方では特に業者数は限られ競争が働きにくいのです。

生コンクリート工場数の推移

さらに生コンの出荷量が減少している影響もあり、工場数は年々減少していて絶対数が少なくなっています。

協同組合の組織力が強い

全国各地にある生コンクリート協同組合によって強固な販売体制が敷かれていることが2つ目の理由です。

生コンクリート価格の推移

上図は生コン価格指数の推移を主要都市別に示したグラフです。

地域によって価格の変化が大きく異なっているのが分かりますね。

例えば大阪では2019年に価格が大きく上昇していて、大阪広域生コンクリート協同組合の対象地域が"大阪府のほぼ全域と兵庫県の一部"に拡大したことで値上げが浸透したと予想されます。

組合員数が多い地域は価格競争が起こりにくく、値上げが浸透しやすい状況となっています。

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組合のチカラで価格が決まってしまうなんて…独占禁止法にひっかからないの?

生コンクリート協同組合は独占禁止法の適用が原則除外されていて、共同販売が可能なのです。

一般のひとから見るとグレーな雰囲気も感じられるところですが、法的にはOK。

生コンを購入する側にとっては、長期で安定して生コンを調達することを考えると協同組合から購入するメリットがあるので、「組合に加盟していない価格が安い業者に発注しよう」と、単純にはいかないのですね。

需要と供給のバランス

生コンに限らず資材全般的に言えることですが、コンクリートを使う需要が高まれば、価格は上昇する方向へ圧力が働きます。

ただし前述のとおり、近年の生コン価格は協同組合の組織力が大きいため、単純に需要と供給による価格競争が起きにくいのです。

生コンクリートの出荷量と価格指数の推移

上図で生コンクリートの出荷量と価格指数の推移を見てみましょう。

出荷量は年々少なくなっているものの、価格は上昇傾向にあることが分かりますね。

つまり出荷量が少ないということは、コンクリートの需要が少なくなっているということ。

需要が低下しているのに価格が顕著に上昇傾向にあるのは、物価上昇(原材料コスト上昇)の影響を踏まえた、協同組合による価格の引き上げ・安定化の影響が大きいと言えるでしょう。

協同組合で一度決まった価格は、鉄や木材のように短期間で価格が大きく変動しません。

一度上がった価格は、なかなか下がりくいと考えられます。

まとめ

生コンクリートの価格が上昇する主な理由は下記の通り。

  • 原材料(セメント・骨材)価格の上昇
  • 運転手不足や燃料費上昇による輸送コストの上昇
  • 生コンという材料の特性上、遠くへ運搬できない
  • 生コン協同組合の組織力の強さにより価格競争(値下げ)が働かない

原材料価格の上昇を受けて生コン価格が引き上がるのは分かりやすい例ですが、協同組合の組織力により価格が安定していて値上げが反映しやすいのが生コン価格の特徴ですね。


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