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セメントの価格が上昇する理由

セメント価格が上昇する理由
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セメントの価格が上昇する理由を知りたい…。

セメント価格上昇の主な要因

  • 原燃料の"石炭"価格の上昇
  • 輸送コストの上昇
  • 人手不足による労務費上昇

近年のセメント価格推移

セメント価格指数の推移

上図のように、セメント価格は近年横ばい傾向が続いていましたが、2022年には全国的に価格が大きく上昇。

2023年には、セメント価格は全国各地でさらに大きく上昇しています。

2018年~2019年頃は燃料の石炭価格上昇を理由に全国的に値上げが浸透し、2022年はロシア・ウクライナ戦争の影響で石炭価格が高騰、エネルギー価格上昇や運転手不足による輸送コストの上昇も加わって、セメント価格はさらに高騰しました。

2020年12月頃には大阪地域だけ価格が上昇しており、これは2019年に大阪広域生コンクリート協同組合の単価が大幅上昇したことで、大阪地域のセメント業者が値上げを行いやすくなったことが理由と考えられますね。

大阪では2022年3月に前月比+10.1%上昇2022年11月には同+18.6%上昇しており、全国の地域のなかでも特別高い上昇率で推移しています。

また札幌では2023年2月に前月比+24.4%と大幅な上昇となりました。

そして大手セメント会社は、エネルギーコストの高止まりや、人手不足による労務費上昇や物流費上昇を背景に、2025年4月1日出荷分より+2,000円/t~+2,200円/t程度の値上げを発表し、セメント価格はさらに上昇する見通しです。

下表では、大手セメント会社が公表している値上げ価格を記載しています。

年月会社名内容理由
2018年4月UBE三菱セメント4月出荷分から1,000円/t 値上げ燃料の石炭価格上昇を転嫁
2018年4月トクヤマ4月出荷分から1,000円/t 値上げ燃料の石炭価格上昇を転嫁
2018年4月太平洋セメント4月出荷分から1,000円/t 値上げ燃料の石炭価格上昇を転嫁
2018年4月住友大阪セメント4月出荷分から1,000円/t 値上げ燃料の石炭価格上昇を転嫁
2021年12月トクヤマ12月1日出荷分から2,200円/t 以上値上げ燃料の石炭価格上昇を転嫁
2022年1月UBE三菱セメント1月出荷分から2,200円/t(+約19%)以上値上げ石炭や重油の高騰により生産・輸送コストが上昇
2022年1月太平洋セメント1月出荷分から2,000円/t(+約18%)値上げ燃料の石炭価格上昇を転嫁
2022年2月住友大阪セメント2月出荷分から2,400円/t(+約21%)値上げ石炭や重油の高騰により生産・輸送コストが上昇
2022年9月太平洋セメント9月出荷分からサーチャージ制を導入ロシアのウクライナ侵攻で石炭価格がさらに上昇
2022年10月トクヤマ10月1日出荷分から3,300円/t 値上げロシアのウクライナ侵攻で石炭価格がさらに上昇
2022年10月UBE三菱セメント10月1日出荷分から3,000円/t 値上げロシアのウクライナ侵攻で石炭価格がさらに上昇
2022年10月住友大阪セメント10月1日出荷分から3,000円/t 値上げロシアのウクライナ侵攻で石炭価格がさらに上昇
2024年5月太平洋セメント2025年4月1日出荷分より+2,000円/t以上値上げ石炭価格の高止まりや円安の影響
2024年問題に伴う物流費や修繕費、労務費などコスト上昇
2024年5月UBE三菱セメント2025年4月1日出荷分より+2,000円/t以上値上げ石炭価格の高止まりや円安の影響、2024年問題や、
物価高、人手不足を背景に物流費や設備維持補修費上昇
2024年6月住友大阪セメント2025年4月1日出荷分より+2,200円/t以上値上げ2024年問題による輸送コスト増加、諸資材の高騰、
労務費や投資に関わる工事費の上昇
近年の主なセメント値上げ状況

石炭価格の影響

セメント生産に必要な原材料

セメント製造時には、原料となる石灰石や粘土、珪石、鉄さいなどを高温焼成するときに、燃料として石炭を多く使用します。

セメントのコストには石炭価格が大きく影響するのです。

石炭の価格動向

石炭価格の推移

上図は、オーストラリア産・南アフリカ産の石炭価格(日本通貨による価格=為替考慮)の推移です。

2021年に価格が上昇していたところ、21年末に急落しましたが、2022年に入って再び急上昇し、22年秋頃まで価格上昇が続きました。

このように2021年~2022年の石炭価格の高騰が、2022年以降のセメント会社の値上げにつながりました。

ロシア・ウクライナ戦争の影響

セメント業界の石炭輸入シェア

2022年2月24日に始まったロシア・ウクライナ戦争は、セメント価格に大きな影響をあたえました。

上図のとおり、2020年度のセメント業界における燃料の石炭輸入相手国は、ロシアが半数近くを占めていたのです。

日本政府が表明したロシアからの石炭輸入の段階的廃止に伴い、輸入元がロシアからオーストラリアやインドネシアへ切り替わりました。

これまでロシアから輸入していた分をそれらの国でまかなうため、石炭需要が集中して価格が上昇するわけです。

ロシア産石炭からの代替需要が欧州で拡大し、円安の進行も後押ししてオーストラリア産の石炭価格は2022年から急上昇しました。(参照:石炭の価格動向グラフ

輸送コストの上昇

石炭価格高騰によるセメント製造コストだけでなく、セメントを作ったあとの輸送コスト上昇も要因のひとつです。

セメント売価のコスト構成モデル

上図のとおり、セメント価格において輸送コストは3割以上を占めていますね。

セメントの流通体制
出典:セメント供給の現状について(セメント協会)

セメントの流通体制は、一次輸送の約70%はタンカー、二次輸送の約90%はトラックが占めており、主に下記が輸送コスト上昇につながっています。

  • 内航船の排ガス規制による適合油への切り替え
  • 内航船の船員不足
  • トラック運転手の不足
  • ガソリン価格の上昇

セメント生産高の減少

セメント生産高の推移

上図のとおり、セメントの生産高は近年減少傾向にあり、低調な需要が続いています。

特に、2022年度~2023年度にかけて生産高は大きく減少しています。

需要が伸びていないなか、セメント価格が上昇するのは製造原価や輸送コスト上昇の影響が大きいと言えます。


【参考資料】

  • 一般社団法人セメント協会

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