ガラスの価格が変動する理由を知りたい…。
建築用ガラスの価格が変動する主な理由
- 需要と供給のバランス
- 原材料の価格
- ガラス製造に必要な燃料の価格
- ガラスの輸送コスト
建築用の板ガラスは、下記のように複数の種類がありますが、本記事では一般的な"フロート板ガラス"を想定しています。
- フロート板ガラス
- 型板ガラス
- 網入りガラス
- 熱線吸収板ガラス
- 合わせガラス
- 強化ガラス
- 複層ガラス
- 熱線反射ガラス
需要と供給のバランス
ガラスの価格が変動する基本的な考え方は、需要と供給のバランスです。
需要(消費)>供給(生産)になれば価格は上昇傾向に、供給(生産)>需要(消費)になれば価格は下落傾向となります。
日本国内のガラス需要
建築資材のガラスは、外装のカーテンウォールや窓ガラス、室内パーティションや自動ドアなどに用いられます。
上図は、日本国内の建築物の着工床面積(需要)の推移を示しています。
建築需要=ガラス需要とはならないものの、ガラスの需要を把握するうえで、建築需要は相関が高い指標といえます。
リーマンショックが起こった2008年より前の着工床面積と比べると、近年は大きく水準を落としていることがわかります。
マクロでみると建築物の新築が減少しているため、ガラスの需要は減少していると言えそうですね。
ガラス供給の動向
上図は、日本国内の"ガラス生産量の推移"を示しています。
リーマンショック後の2009年、コロナショック後の2020年~2021年は生産量が減少しているものの、近年は比較的安定して推移していることがわかります。
上図は、板ガラス輸入量の推移を示しています。
2007年頃までは輸入量が比較的多い水準で推移していました。
これは中国のガラス製品価格が日本よりも安く、中国からガラス製品が多く流入していたと考えられます。
原材料の価格
板ガラスの原材料は、ガラスくず(カレット)、珪砂(けいしゃ)などが主に用いられています。
過去にガラスメーカーが値上げしたときは、原料のけい砂やソーダ灰の調達価格が上昇したことも理由にありました。
ガラス製造に必要な燃料価格や輸送コスト
上図は、板ガラスの製造工程(フロート法)を示しています。
ガラス製造の際には、ガラス原料をバーナーで溶解するため、燃料として重油が使われます。
そのため重油の原料である"原油"の価格は、ガラス資材費に転嫁されます。
またガラスが製造されたあと、ガラスメーカーから出荷されるための輸送コストも"ガラス資材価格"へ転嫁されます。
ガラスの価格動向
上図は、日本国内のガラス価格の動向を示しています。
1990年代に価格が大きく下落して以降、2000年代は安定して推移している傾向にあります。
2022年には、ガラスメーカーが重油など原燃料価格や物流費、円安を理由に値上げを打ち出し、ガラス価格は大きく上昇しています。
【参考資料】
- 板ガラス価格の長期時系列決定要因分析|(財)建設物価調査会 建築調査部 建築調査一課 島田理久
本記事は、一級建築士であり設計・積算・工事監理から建築コストコンサルの経験がある著者が、第三者の立場から考察した記事です。